小児科pediatrics

イルカとハートのアイコン小児科

  • 鼻汁・咳

    お子さんの症状として最も多いのが、鼻汁・咳です。その原因には、急性上気道炎(風邪)や急性気管支炎・肺炎等の感染症、アレルギー、気管支喘息等、様々なものがあり、発熱を伴うか、長引いているか、発作的に出現するか等々で鑑別していくことになります。

    • 急性上気道炎(風邪)

      原因として最も多いものです。鼻や喉に感染が起こり炎症を起こします。症状は、咳・鼻汁の他、鼻づまりや発熱等で原因の9割以上がウイルスによるものです。このため、風邪には基本抗菌薬は効果がないということになります。

    • 急性気管支炎、肺炎

      熱が長引いたり、咳込みが徐々に悪化してくる場合に疑う必要があります。乳幼児期に罹ることが多く、年長児や学童の場合にはマイコプラズマという特殊な菌で引き起こされることが多いです。肺の音や胸部のレントゲン写真で診断していきます。これにもウイルス性と細菌性のものがあり、細菌性の場合は抗菌薬療法を実施する必要があります。呼吸状態によっては入院治療が必要となります。

    • 副鼻腔炎

      額や頬の骨の中にある空洞を副鼻腔と言い、そこに炎症を起こすものを言います。急性のものと慢性のものがあります。膿性の鼻汁とそれに伴う湿性咳嗽が主な症状です。急性期には発熱することもあります。2歳未満の年少児では副鼻腔自体があまり発達しておらず、副鼻腔炎を罹患することはまずありません。慢性的なものは耳鼻科で定期的な診察・治療を受けた方が良いでしょう(‘ω’)ノ

    • クループ症候群

      ケンケン(バオバオ?)という甲高い咳が特徴的で、これのみで診断ができてしまうほどです。喉の奥の方、声門下の部分が炎症を起こすことで、このような特徴的な咳がみられ、炎症が強くなると気道が狭くなって呼吸が苦しくなります。ウイルス感染で起こるものは発熱を伴うことが多いです。治療は主に炎症による浮腫みを抑えてあげることが中心になります。

      主な病原体

      RSウイルス感染症 以前は冬の感冒のウイルスとして有名でしたが、現在は夏でも流行が見られます。2歳以上では重症化することは少ないですが、新生児や乳児では細気管支炎や肺炎になるリスクがあります。また、早産や低体重で産まれたり、肺や心臓に基礎疾患がある場合などはその重症化リスクはより高くなります。迅速診断の検査がありますが、上記の様に本来感冒の原因ウイルスで特に治療薬もないため、基本的に1歳以上のお子さんには保険適応がありません。

      インフルエンザ いわずと知れた冬の感染症ですが、迅速診断や抗インフル薬の出現で、最近は積極的に診断・治療が行われています。但し、発熱直後では検査感度の問題で陽性とならない場合もあり、本人の状態が許すなら、12時間以上経過してから検査を受けた方が良いでしょう。一方で、インフルエンザ脳症や肺炎といった重篤な合併症も知られており、意識や呼吸の状態がおかしい場合は緊急で受診する必要があります。 登校停止基準は、発熱から丸5日間が経過する+解熱後丸2日間(幼児では丸3日間)が経過する、となります。このため、この条件を満たした場合に治癒証明記載可能となります。

      溶連菌感染症 細菌性咽頭扁桃炎の代表的な病原体です。症状は、発熱、咽頭痛、発疹、腹痛等があります。迅速診断の検査がありますが、陽性に出たからといって病原体であるとは限りません・・・実は溶連菌、常在しているだけで悪さをしていないこともあるのです。なので、症状や咽頭扁桃の所見と併せて診断を下す必要があります。抗菌薬に対する感受性は良く、内服して1~2日程度で解熱しますが、10日前後は内服を継続する必要があります。また、稀ではありますが罹患後に様々な合併症(腎炎やリウマチ熱等)を起こすことがあり、注意が必要です。

      アデノウイルス感染症 咽頭炎であったり、結膜炎であったり、腸炎の原因にもなることがあります。咽頭炎の場合、幼児期では熱が長引くことが多く、そのようなお子さんで迅速検査陽性だと、やっぱりね・・という感じになります。但し、診断できても治療薬がありませんので、対症療法で経過を見ていくことになります。咽頭結膜熱の場合には、登校停止基準があります。

      マイコプラズマ感染症 よく医療関係者が、『マイコ』と呼ぶちょっと変わった菌です。年長児以上で気管支炎や肺炎に罹患した場合、このマイコが主要な原因菌です。放っておいても治ることが多いのですが、1~2週間熱と咳が持続するため、あまり放っておかれることは少ないですね。実はこの菌の変わったところは、菌自体が抗菌薬でやられた後も、刺激された免疫系が炎症を持続させることがあります。免疫系を刺激することで、皮疹や関節痛等の気道症状以外の症状をきたしてくることもあります。

    • 気管支喘息

      発作的に咳込みや喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)が出現します。発作は夜間~朝方に出現することが多く、運動後にみられることもあります。適切な管理をしないと反復したり、長引いてしまうことが多く、重症化すると入院治療が必要になります。アレルギー体質がなくても、乳児期や幼児期早期に気管支炎等の下気道感染を起こした後に発症することもあります。

  • 腹痛・嘔吐・下痢

    主に胃腸に問題がある際に出現する症状で、頻度的には急性胃腸炎が最も多いですが、時に異なる原因が隠れていることもあり、長引く嘔吐や下痢、強い腹痛等がみられる場合には注意が必要です。

    • 急性胃腸炎

      嘔吐・下痢・腹痛を呈する疾患として最もポピュラーな疾患です。胃腸炎を惹起するウイルスが初期症状は嘔吐を呈することが多いですが、嘔吐のみで下痢が目立たないこともあります(この逆で下痢のみのこともあります)。胃腸炎の原因の殆どが下記の様なウイルス感染によって起こり、特別な治療薬はないため、対症療法が中心になります。

      主な病原体

      ノロウイルス感染症 いわずと知れた冬季の胃腸炎の代表的な原因ウイルスです。乳幼児がかかると重症化するリスクがあるので、3歳未満までは迅速検査が保険で認められています。皆さんノロウイルスの胃腸炎と診断されると驚かれますが、胃腸炎の原因ウイルスとしてはかなりポピュラーです。

      ロタウイルス感染症 春先に乳幼児で流行し重症化することが多かったですが、現在は予防接種も始まっており、罹患数の減少だけでなく重症者も少なくなっている印象があります。迅速検査はありますが、診断できた場合でも特に治療薬はありません・・・。

      細菌性腸炎 いわゆる、食中毒ですね( ゚Д゚)。食中毒ですから、夏場に流行ることが多いです。原因となる細菌にはいくつかのものがありますが、最近最も有名なのは、腸管出血性大腸菌O-157であると思います。これは何故か・・、重症化しやすいということもありますが、乳幼児で溶血性尿毒症症候群という重い合併症を起こすリスクが高くなるためです。細菌感染なので、抗菌薬が効くかというとその効果のほどは立証されていません。

    • 便秘症

      案外、小児の腹痛の原因として多いです。多いからこそ、腹痛の原因が便秘で片付けられてしまうことも多い様な印象があります・・。典型的には下腹部の痛みで、左下腹部に便の塊を触れることがあります。痛みが強いときは、下剤の内服よりも浣腸や座薬の方が即効性があります。

    • 急性虫垂炎(盲腸)

      右下腹部痛が典型的な症状ですが、病初期は必ずしも同部の痛みではないこともあります。幼児期では破れてしまい重症化することもあり注意が必要です。最近では急性期に緊急で手術をするのではなく、抗菌薬で炎症を落ち着かせてから手術を行うことが多い様です。

    • 腸重積症

      病名の通り、腸管が腸管の中に入りこんで重なり圧迫されてしまう病気です。乳幼児期にみられ、間歇的腹痛、嘔吐、血便、活気不良といった症状が見られます。発症から時間が経過すると、手術が必要になることもあり注意が必要ですが、胃腸炎から続発して発症することもあり、その鑑別が難しいこともあります。

  • 発熱

    発熱は感染症等で体の免疫システムが病原体に反応し、炎症を起こすことで体温が上昇します。一種の防御反応ですが、免疫システムに異常が生じてても発熱します。良く心配されるのですが、熱の高さと病気の重症度は必ずしも比例するものではありません。つまり、熱が高くても軽症のことはありますし、逆にそれほど高熱でなくとも重症なことはあります。また、通常の発熱で脳がおかしくなることはなく、体に変調をきたす程の高熱(41.5℃以上)が持続する場合は、すでに脳の体温調節中枢がおかしいか、免疫系が暴走している状況であり非常に重篤です。
    解熱剤に関してですが、これは病原体をやっつける薬ではありませんので、病気自体が良くなる訳ではありません。もちろん、解熱剤自体は熱を下げることで一時的に食欲が出たり、楽になってゆっくり眠れたりするので意味がないわけではありません。

    • 熱性けいれん

      その名の通り熱に伴って発症する痙攣発作で、通常発熱直後(多くは24時間以内)にみられます。持続時間は数分以内のことが多く、全身のひきつけで、1回の発熱のエピソードで繰り返さないことが特徴となります。年齢的には5歳ぐらいまでと言われています。70%は再発することなく単回で終わり、治療の必要がないことが多いです。何度も繰り返す場合には、発熱毎に予防の座薬が必要になります。

  • 発疹

    発疹は様々な原因で出現しますが、大きくは感染症によって出現するものと、アレルギー反応で出現するものに分けられます(それ以外にも先天的な要因で出現するものなどもあります)。感染症によるものは典型的であれば、『○○ですね』と診断が可能ですが、そうでない場合も多くあり、診断が確定できないこともしばしばです。

    • 突発性発疹症

      2~3日の高熱の後に全身に発疹が出現し診断されます。1歳前後で罹患することが多いです。2回目を3歳前後で罹患する子もいます。既感染の人の唾液からはウイルスが排泄されているため、そもそも隔離する意味はありません(皆乳幼児期にかかります)。典型的な経過をとらない場合もあり(熱のみ、発疹のみ等)、この場合は診断できません・・・( ゚Д゚)。治療薬は特になく、自然経過での治癒を待つことになります。

    • 手足口病

      夏に流行ることの多い、いわゆる夏風邪の一種で、手、足、口の中に水疱ができるのが特徴です。乳幼児に多い病気です。咳や唾液などの飛沫感染のほか、便からもウイルスが排泄されて口からうつったりします。潜伏期間は3~6日くらいです。手足や口に特有の発疹がでます。痛みやかゆみはあまり目立ちません。治療薬は特になく、自然経過での回復を待ちます。
      最近は典型的な部位に発疹がでず、診断が難しいことがあったり、治癒後1~2か月して爪が剥けててきたりすることがあります。

    • 伝染性紅斑(リンゴ病)

      両側のほっぺが赤くなるあれです。10~20日間の潜伏期間があります。うつる可能性がありますが、ほっぺが赤くなる頃には伝染力はほぼなくなっており、隔離はこの段階では必要ありません。体にも皮疹をしばしば伴います。本人の全身状態は良好なことが多いですが、成人や年長児が罹患すると関節痛を伴うことがあります。

    • 伝染性膿痂疹(とびひ)

      ブドウ球菌や溶連菌といった細菌が皮膚に感染することで生じます。膿疱とそれが破れて痂疲(かさぶた)ができるため、この病名がありますが、かきむしった手を介して、発疹が全身へ広がる様子が、火事の火の粉が飛び火することに似ている為、「とびひ」とも呼ばれています。
      とびひは皮膚の傷に細菌が入り込み、感染することで発症します。当然ですが接触により感染する可能性があります。特に元来皮膚のバリア機能が低いアトピー性皮膚炎のお子さんではひどくなることがあります。

    • ヘルパンギーナ

      いわゆる夏風邪の一種です。高熱と喉の奥に口内炎の様なものができ、痛みで経口摂取が滞ることがあります。小児科医であれば喉をみて、『あ、ヘルパンギーナですね』と容易に診断できます。

    • 水痘(水ぼうそう)

      水痘帯状疱疹ウイルスは、空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれかの方法で感染していきます。典型的な発疹が全身に出現すれば診断は容易です。罹患歴があれば繰り返すことは原則ありませんが、予防接種のみでは発症することがあります。発熱することもありますが、平熱で経過することもあります。
      治療薬がありますが自然治癒もします。発疹がすべて痂疲(かさぶた)化するまでは、登校・登園は禁止です。

    • 麻疹(はしか)

      昔は時々患者さんがいましたが、最近は予防接種が徹底され、かなり珍しくなっています(殆どが成人あるいは年長児による海外からの持ち込みと、持ち込んだ方からの二次感染)。典型的な経過としては、発熱+感冒症状の先行があり、二段階目の発熱に伴い発疹が全身に出現してきます。特別な薬はなく自然に治癒することを待つしかありませんが、罹患中はかなり消耗しぐったりとしてしまいます(゚Д゚;)
      接触早期であれば予防法がないわけではありません(ただし完全ではありません)。予防法も安易に選択できるものではないため、接触した場合には医師に相談するようにしてください。

    • 川崎病

      熱、発疹、眼の充血、首のリンパ節の腫れ、手足の浮腫みや発赤、BCGを接種した部位が赤くなったり腫れたり等の症状を呈します。これらの症状は一度に出てくる場合もあれば、時間差で出てくる場合もあります。原因は不明ですが、治療法は確立しており合併症(特に冠動脈瘤)を防ぐため、しっかり治療を受ける必要があります。

    • 流行性耳下腺炎(おたふく)

      下顎角(下あごの角の辺り)に耳下腺という唾液腺(唾液を分泌する組織)がありますが、その部分にムンプスというウイルスが感染して腫れます。顎下腺(頬の下)という唾液腺も腫れることがあります。発熱することもあれば、平熱で経過することもあります。痛みはそこまで強くないことが多く、表面が発赤することもありません。逆にこれらの症状がみられる場合は、他の病気の可能性もあります。また、稀ではありますが、髄膜炎や膵炎、年長児では精巣炎といった合併症を起こすこともありますので、強い頭痛や嘔気、腹痛、会陰部痛を訴える様なら要注意です。

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